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    だが、やつぱり戻らないで、しきりとこつちを見ながら行く。

    相手はしばらく黙つていた。だが、場所が高いのと、柵の中にいるためか、落ちついて答へた。

    「ねえ!」

    と、小谷が云つた。

    練吉が元の座へ帰つてゆくと、房一はぽつんと一人とり残された。来客達の大半とはすでに顔見知りだつたにかゝはらず、今夜の席では房一は唯一の新顔だつた。

    と、房一は加藤巡査に云つた。御苦労だが、加藤巡査には角屋のところで本署の自動車を一先づとめてもらひたい。こつちは自分が引受けるから、こゝへ乗りつけないやうに何とか待たせていたゞきたい、その間にこちらの始末をつけ、自分が責任者になつて出向いてよく話をするから――。

    「さうだよ、ジョン」

    並んで立つと、いきなり

    口ごもつて、

    と、鬼倉は意外に思つたらしい。小首をかしげていたが、

    徳次は明かに房一にくれようと思つていたらしかつた。で、間が悪さうにそこに立ちはだかつたまゝ、あのきよろりとした目でしきりに練吉と房一を見くらべていた。

    「だつて、喜作さんはこの土地にはいないでせう」

    これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。

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